はじめに
「2026年は、地震が多い年だった」――4月の三陸沖の地震や、7月の熊本の震度7を思い出して、そう感じている人もいるのではないでしょうか。
身近な“思い込み”を公的なデータで確かめる「本当なの?」シリーズの6回目です(前回はクマの出没を調べました)。
読み進める前に、予想してみてください。2026年は、本当に地震が増えているでしょうか?
今回は、どこかで震度1以上を観測した「揺れを感じた地震」の回数を、どの年も1月1日〜10月26日で比べます。「例年」は、1997年以降の同じ期間の中央値です。データは気象庁の震度データベースと震源のデータで、くわしくは記事の最後の「データと確かめ方」にまとめました。
結果:揺れを感じた地震は例年より多め。でも、とび抜けてはいない
2026年は、揺れを感じた地震が例年より多い年です。ただし過去最多ではなく、2024年と2025年の方が多かったのです。
- 震度1以上の地震は約2,500回で、例年の約1.5倍です
- それでも、1997年以降の30年では7位でした。2024年と2025年のほかにも、もっと多い年が4つあります
- 平均と比べると、わずかに少なくなります。2000年と2011年が、平均を大きく引き上げているためです
震度3以上・震度4以上などで数えても、2026年が1位になることはありませんでした。
予想と違った点①:例年との差が大きいのは「強い揺れ」の方
「地震が増えた」と感じるとき、思い浮かべるのは、スマホの通知が何度も鳴るような小さな揺れの多さかもしれません。ところが、例年と比べて差が大きいのは、強い揺れや規模の大きい地震の方でした。
- 揺れで数えると、震度1以上は例年の約1.5倍、震度5弱以上は2.5倍でした
- 規模(マグニチュード)で数えても同じ形です。M3以上は約1.2倍、M6以上は約1.4倍で、大きい地震ほど差が大きくなっています
- M7以上は、三陸沖・岩手県沖・熊本の3回でした。例年は1回です
2026年に最大震度5強以上を観測した地震は、8回ありました。
| 発生日 | 震央地名 | 規模 | 最大震度 |
|---|---|---|---|
| 1月6日 | 島根県東部 | M6.4 | 5強 |
| 4月18日 | 長野県北部 | M5.0 | 5強 |
| 4月20日 | 三陸沖 | M7.7 | 5強 |
| 4月27日 | 十勝地方南部 | M6.2 | 5強 |
| 5月20日 | 沖縄本島近海 | M5.9 | 5強 |
| 6月25日 | 岩手県沖 | M7.2 | 6強 |
| 6月26日 | 山梨県東部・富士五湖 | M5.6 | 6弱 |
| 7月28日 | 熊本県熊本地方 | M7.1 | 7 |
予想と違った点②:揺れの3分の1以上は、熊本の地震だった
2026年に揺れを感じた地震の3分の1以上は、震央が熊本県の地震でした。 ほとんどが、7月28日の熊本の地震(最大震度7)のあとに起きています。
- 月ごとに見ると、7月と8月が飛び抜けていて、例年の3〜4倍でした
- 1月も例年の約2倍でした。1月6日の島根県東部の地震のあとに、地震が続いたためです
大きな地震の後の地震を除くと?
大きな地震のあとには、近くで地震が続きます(余震など)。その分を除いても2026年は多いのかを、2つの決め方で確かめました。
- 除いたあとの震度1以上・震度4以上は、ほぼ例年並みでした
- 一方、震度5弱以上は、除いたあとも30年中4〜5位に残りました
- 除いた地震の多くは、熊本の地震のあとの地震です。三陸沖や岩手県沖は海の地震で、除いた数はずっと少なめでした
つまり、2026年の「揺れの回数」の多さは、主に熊本などの大きな地震のあとの地震によるもので、それを除くと例年並みです。ただし、強い揺れを起こした地震そのものは、例年より多い年でした。
規模で見ると、多かったのは1〜4月
M5以上の地震が多かったのは1〜4月で、5月からは例年並みでした。
- 1〜4月のM5以上は例年の約2倍で、29年中3位でした
- 震央も日にちも近い地震をまとめると、一番大きいまとまりは三陸沖のM7.7を含むものでした。各年の一番大きいまとまりを除くと、2026年はむしろ3位に上がります
- 熊本の地震は、揺れの回数を大きく押し上げました。でも、M5以上の数ではそれほど大きくありません
「揺れの回数」と「規模の大きい地震の数」では、多かった時期も場所も違います。
「昔より増えた」は、データでは確かめにくい
「最近は地震が増えた」と、もっと長い目で比べたくなるかもしれません。ただ、地震の回数は、どれだけ細かく観測しているかで変わります。
1996年に震度の観測の仕組みが変わり、観測点が大きく増えました。観測点が増えると、震度1を観測する地震も増えます。そのため、この記事では1997年より前の年とは比べていません。
もう一つの発見:地域で見ると、九州と沖縄が多く、伊豆諸島は少なかった
震度1以上の地震を、震央地名で地域に分けて数えると、地域で大きな差がありました。
| 地域 | 2026年 | 中央値(1997〜2025年) | 30年での順位 |
|---|---|---|---|
| 沖縄 | 117回 | 61回 | 2位 |
| 九州 | 1138回 | 204回 | 3位 |
| 北海道 | 180回 | 134回 | 5位 |
| 中国・四国 | 117回 | 54回 | 7位 |
| 東北 | 433回 | 283回 | 8位 |
| 関東 | 197回 | 181回 | 13位タイ |
| 中部 | 227回 | 202回 | 14位 |
| 近畿 | 77回 | 86回 | 21位タイ |
| 伊豆諸島・小笠原 | 36回 | 74回 | 28位 |
- 九州は例年の5倍を超えました。それでも30年では3位で、2016年と2025年の方が多い年でした
- 沖縄は30年中2位、中国・四国は例年の約2倍でした
- 関東・中部は例年並み、近畿はやや少なめ。伊豆諸島・小笠原は30年中28位と、少ない年でした
「全国で地震が増えた」というより、九州など一部の地域で多かったのが、2026年の形です。
まとめ
- 2026年に揺れを感じた地震は、例年の約1.5倍。ただし30年中7位で、2024年と2025年の方が多かった
- 例年との差が大きいのは強い揺れ・規模の大きい地震の方。震度5弱以上は例年の2.5倍だった
- 揺れの回数の3分の1以上は熊本県の地震。大きな地震のあとの地震を除くと、揺れの回数はほぼ例年並み。それでも震度5弱以上は、30年中4〜5位に残った
- M5以上が多かったのは1〜4月で、5月からは例年並み
- 地域では九州と沖縄が多く、伊豆諸島・小笠原は少なかった
- 限界:比べたのは1997年(Mは1998年)以降だけで、それより前とは観測の仕組みが違う。M別の回数は2025年と2026年が速報で、確定値になると増えることが多い。余震を除く決まりは簡単なもので、決め方によって数は変わる。多かった理由は、このデータからはわからない。この記事は、これからの地震の起こりやすさを示すものではない
次回(2026年11月3日公開予定)は、「日本で一番雨が多い場所」は本当にあの場所なのかを確かめます。
おまけ:揺れを感じた地震が一番多かった年は?
震度データベースは1919年までさかのぼれます。同じ1月1日〜10月26日で、震度1以上の地震が一番多かったのは、1966年の51533回でした。この年は長野県北部で地震が続き、震度4以上の62回のうち52回が、震央地名が「長野県北部」の地震でした。
2位は2000年の17246回、3位は2011年の9852回です。2000年は、震度1以上の58%(9965回)が伊豆諸島・小笠原の地域の地震でした。
ただし、1966年は震度を人が判断し、観測点も少なかった時期です。今の年と、そのまま比べることはできません。
データと確かめ方
数え方
| 指標 | 基準 |
|---|---|
| 揺れを感じた地震 | どこかで震度1以上を観測した地震(気象庁の「最大震度」で数える) |
| 強い揺れの地震 | 最大震度が5弱以上の地震 |
| 規模(マグニチュード) | M3以上・M4以上・M5以上・M6以上・M7以上の地震。範囲は気象庁が「日本及びその周辺」として数える北緯20〜49度・東経120〜154度(海の地震を含む) |
| 期間 | どの年も 1月1日〜10月26日(2026年のデータの最終日にそろえた) |
| 例年 | 過去の同じ期間の中央値(震度は1997〜2025年、Mは1998〜2025年) |
「例年」に平均ではなく中央値を使ったのは、2000年や2011年のように、ひとつの年だけ回数が桁違いに多い年があるからです。平均はその年に大きく引っぱられます。
使ったデータは気象庁の2つです。揺れの回数は「震度データベース検索」から、1919年以降の各年1月1日〜10月26日の地震を、最大震度ごとに集計しました。マグニチュード別の回数は、1998〜2024年が「地震月報(カタログ編)」の震源データ(確定値)、2025年からが日ごとの「震源リスト」(速報)です。どちらも2026年10月28日に取得しました。震度データベースは10月26日までが公開されていて、震源リストも10月26日の分までが載っていました。
震度ごと・規模ごとの回数
震度1以上は2523回で、中央値(1656回)の約1.5倍、平均(2676回)よりわずかに少ない値です。1997年以降の30年で、2026年より多かったのは2000年(17246回)、2011年(9852回)、2016年(5857回)、2025年(3984回)、2024年(3567回)、2012年(2712回)です。
| 最大震度 | 2026年 | 中央値 | 平均 | 1997年以降の30年での順位 |
|---|---|---|---|---|
| 震度1以上 | 2523回 | 1656回 | 2676回 | 7位 |
| 震度3以上 | 291回 | 171回 | 277.3回 | 6位 |
| 震度4以上 | 71回 | 42回 | 69.9回 | 7位タイ |
| 震度5弱以上 | 20回 | 8回 | 12.9回 | 5位タイ |
| 震度6弱以上 | 3回 | 1回 | 2.1回 | 7位タイ |
(どの年も1月1日〜10月26日。中央値・平均は1997〜2025年)
| 規模 | 2026年 | 中央値 | 平均 | 1998年以降の29年での順位 |
|---|---|---|---|---|
| M3以上 | 5769回 | 4987.5回 | 6051.6回 | 8位 |
| M4以上 | 1146回 | 974.5回 | 1190.3回 | 7位 |
| M5以上 | 168回 | 134.5回 | 157.7回 | 6位タイ |
| M6以上 | 22回 | 16回 | 18.8回 | 4位 |
| M7以上 | 3回 | 1回 | 1.7回 | 5位タイ |
(どの年も1月1日〜10月26日。中央値・平均は1998〜2025年。範囲は北緯20〜49度・東経120〜154度)
中央値と比べた割合は、震度1以上が152%、震度5弱以上が250%、M3以上が116%、M4以上が118%、M5以上が125%、M6以上が138%です。M7以上は、4月20日の三陸沖(M7.7)、6月25日の岩手県沖(M7.2)、7月28日の熊本県熊本地方(M7.1)の3回でした。2016〜2025年の同じ期間のM7以上は、年に0〜3回でした。
月ごと・熊本県の回数
| 月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月(26日まで) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 震度1以上(2026年) | 291 | 141 | 205 | 207 | 169 | 156 | 572 | 449 | 180 | 153 |
| 中央値(1997〜2025年) | 131 | 107 | 142 | 181 | 151 | 160 | 135 | 151 | 137 | 120 |
- 2026年の震央地名が熊本県の地震は943回で、2026年の37%です。熊本県熊本地方が552回、熊本県天草・芦北地方が378回などです。このうち7月28日より前は79回でした
- 1月は、6日の島根県東部の地震(M6.4、最大震度5強)のあとの地震が多く、震央地名が島根県東部の地震が60回ありました
大きな地震の後の地震の除き方
どちらも、1997〜2026年のすべての年に同じ決まりを当てはめました。
- 除き方A:最大震度5強以上の地震から、震央が50km以内で30日以内に起きた地震を除く
- 除き方B:最大震度5弱以上の地震から、震央が100km以内で90日以内に起きた地震を除く(Aより広く除く)
| 最大震度 | そのまま | 除き方A | 除き方B |
|---|---|---|---|
| 震度1以上 | 2523回/中央値1656回(7位) | 1617回/中央値1394回(9位) | 1218回/中央値1153回(13位) |
| 震度4以上 | 71回/中央値42回(7位タイ) | 37回/中央値36回(13位タイ) | 27回/中央値29回(16位) |
| 震度5弱以上 | 20回/中央値8回(5位タイ) | 12回/中央値7回(4位タイ) | 9回/中央値6回(5位) |
| 震度6弱以上 | 3回/中央値1回(7位タイ) | 3回/中央値1回(2位タイ) | 2回/中央値1回(3位タイ) |
(2026年の回数/1997〜2025年の中央値(同じ決まりを当てはめた値)。括弧は1997年以降の30年での順位)
- 除き方Aで2026年に除かれたのは906回で、そのうち719回が熊本県熊本地方のM7.1のあとの地震でした。除き方Bでは、除いた1305回のうち890回です
- 除き方Bの震度1以上(1218回)は、平均の1244.3回とほぼ同じです
- 除き方Aで、三陸沖のM7.7と岩手県沖のM7.2の「あとの地震」として除かれたのは、どちらも33回でした
M5以上のまとまりの分け方
M5以上の168回を、震央が100km以内・30日以内の地震どうしでつないで「まとまり」に分けました。
- 一番大きいまとまりは、三陸沖のM7.7を含む20回(3月8日〜5月11日)で、168回の12%でした。次は宮古島北西沖のM6.2を含む16回(2月27日〜3月7日)です
- 各年の一番大きいまとまりを除くと、2026年は148回(中央値113.5回)で、29年中6位タイから3位に上がりました。ほかの年は、一番大きいまとまりを除くと大きく減るためです
- 熊本県熊本地方のM7.1を含むまとまりは7回でした
| M5以上 | 2026年 | 中央値(1998〜2025年) | 29年での順位 |
|---|---|---|---|
| 1〜4月 | 94回 | 47.5回 | 3位 |
| 5月1日〜10月26日 | 74回 | 79回 | 17位 |
まとまりの分け方や、上の「除き方」は、この記事のための簡単な決まりです。地震学で余震を取り除くときの方法(デクラスタリング)ではありません。前の年に始まった地震活動の続きは除いていません。
観測の仕組みの変わり目
- 1996年を境に、震度は計測震度計による観測になり、自治体などの震度計のデータも使われるようになりました。震度1以上の回数の中央値は、1987〜1995年の897回に対して、1997〜2006年は1427回でした。この差には、観測の変化の分が含まれます
- 震源も、1997年10月から気象庁・大学・防災科研などのデータをまとめて決めるようになりました(一元化)。そのため、マグニチュード別の回数は1998年から比べています。小さい地震ほど、観測の進歩で見つかる数が変わりやすい点にも注意が要ります
- マグニチュード別の回数は、2025年と2026年が速報で、1998〜2024年は確定値です。確定値になるときには、震源やマグニチュードが見直され、小さな地震が足されることがあります。そのため、2025年と2026年の値は確定値になると増えることがあり、中央値や2026年の順位も少し変わる可能性があります
- 確定値には、気象庁が「参考震源」(精度が足りず、正式な震源としては採用しなかったもの)として区別した地震も含めて数えました。この区別は2016年3月までしか付いておらず、それより後の年とそろえられないためです。参考震源を除くと、M4以上の順位は7位から6位に、M5以上は6位タイから5位に上がりますが、結論は変わりません
地域の分け方
震央地名を9つの地域にまとめ、表は順位の順に並べました。海の地震は近い陸の地域に入れました。どの地域にも入らない地震(震央が決まらない地震や遠い海など。2026年は1回)は表から除きました。九州の30年で2026年より多いのは、2016年(4350回)と2025年(2781回)です。
出典
- 気象庁「震度データベース検索」(1919〜2026年の各年1月1日〜10月26日の、最大震度ごとの地震の回数と地震の一覧。2026年10月26日まで)
- 気象庁「地震月報(カタログ編)」の震源データ(1998〜2024年、確定値。気象庁の震源だけを使い、北緯20〜49度・東経120〜154度の地震を数えた)
- 気象庁「震源リスト」(2025年1月1日〜2026年10月26日、速報)
- 気象庁「地震・火山月報(防災編)」付録3(日本及びその周辺のマグニチュード別の地震の回数。震源リストから数えた回数が大きくずれていないかの照合だけに使い、この記事の数字には使っていない)
- 気象庁「震度について」(1996年4月から計測震度計で観測していること、地方公共団体・防災科研の震度観測点の震度も発表していること)
- 気象庁「地震月報(カタログ編) 利用の手引き」「震源レコードフォーマット」(参考震源の意味と、その印が2016年3月までであること)
いずれも2026年10月28日に取得。回数・中央値・平均・順位は、取得したデータから計算しました。2026年の値は速報で、後で変わることがあります。
この連載の記事は、「本当なの?」の一覧でまとめて読めます。
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