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暑くなって、紅葉も果物の産地も変わったって本当?公的データで確かめてみた

はじめに

「最近は紅葉が遅くなった」「暑くなって、りんごやみかんの産地が北へ移った」「ブリが北海道で獲れるようになった」――秋になると、こんな話を聞きます。どれも「暑くなったから」と一緒に語られますが、本当に気温と同じ動きをしているのでしょうか。

身近な“思い込み”を公的なデータで確かめる「本当なの?」シリーズの4回目です。前回は、2026年は本当に雨が多いのかを確かめました。今回は、紅葉と食べ物の産地を、気温のデータと組み合わせて見ていきます。

読み進める前に、予想してみてください。東京のイチョウが黄葉する日、50年前と比べて何日遅くなったと思いますか?

  • 変わらない
  • 約3日
  • 約10日
  • 約1か月

この記事では、次のデータを組み合わせます。どれも国の機関が公開しているものです。

調べること使うデータ
紅葉の日気象庁の「生物季節観測」。気象台などで決まった木(標本木)全体を眺めて、大部分の葉の色が変わった状態になった最初の日を記録しています。いちょうの「黄葉日」と、かえでの「紅葉日」を使います(1953〜2025年)
秋の気温気象庁の「過去の気象データ検索」の、同じ気象台の9〜11月の平均気温(月平均気温の平均)
果物の産地農林水産省の「作物統計調査」の、都道府県別のりんご・みかんの収穫量(1973〜2024年)
魚農林水産省の「海面漁業生産統計調査」の、都道府県別の漁獲量(ぶり類・さんま・するめいか・さけ類、1956〜2024年)。水揚げした港のある都道府県で数えていて、獲った海の場所ではありません
海の温度気象庁の「海面水温の長期変化傾向(日本近海)」の、海域ごとの年平均の海面水温(平年との差)

「50年前」は1966〜1975年の10年の平均、「いま」は2016〜2025年の10年の平均で比べます。1年だけだと、その年の天気で大きくぶれるためです。どのデータも2026年10月30日に取得しました。

答え:東京のイチョウは約10日遅くなった

先に答えを出すと、東京のイチョウの黄葉は、50年前より約10日遅くなっていました。予想の選択肢なら「約10日」です。

  • 1966〜1975年の平均は11月14日、2016〜2025年の平均は11月25日で、10.2日遅くなりました(どちらも10年すべてに記録があります)
  • 最近の5年でも、2023年は12月1日、2024年は12月3日と、12月に入った年がありました。2025年は11月22日です。気象庁の平年値(1991〜2020年の平均)は11月23日です

東京だけではありません。50年前といまの両方の10年に、決められた種類の木(正規の種目)で8年以上の記録がある気象台などで比べると、次のようになりました。

比べた地点遅くなった地点遅くなった日数(地点の真ん中)
いちょうの黄葉292615.2日
かえでの紅葉2222(すべて)15.2日

気象台によっては、決められた種類の木がなく、近い種類の木(代替の種目)で観測している年があります。種類が違うと色づく時期も違うため、代替の種目の年は比べていません。

いまも観測を続けている地点の平均を年ごとに並べると、いちょうの黄葉は10年あたり2.2日、かえでの紅葉は10年あたり3.0日のペースで遅くなっています。いちばん遅かったのは2024年で、平年より8.0日遅い年でした。

イチョウの黄葉は、50年前より遅くなった。全国の平均で、いちょうが黄葉した日の平年(1991〜2020年の平均)との差を1953〜2025年の年ごとに示した棒グラフ。1960〜1980年代は平年より早い年がほとんどで、2000年代からは平年より遅い年が増えている。直線の傾向は10年で2.2日遅くなるペース。いちばん遅かったのは2024年で、平年より8.0日遅い

全国の平均は、いまも観測している地点(いちょうは最大47地点、かえでは最大43地点)のそれぞれで、黄葉日と1991〜2020年の平均との差を出し、年ごとに平均したものです。1年に15地点以上の記録がある年だけを使っています。気象庁は2020年末で生物季節観測の多くの種目をやめましたが、いちょうの黄葉とかえでの紅葉は2021年からも続けています。

予想と違った点:果物の産地は、ほとんど北へ動いていない

「暑くなったから、産地が北へ移った」と言われる果物はどうでしょうか。りんごとみかんの都道府県別の収穫量で、産地の重心(都道府県の収穫量を重みにした、県庁所在地の緯度の平均)が、50年でどれだけ北へ動いたかを出しました。

その結果、重心が北へ動いたのは、りんごで21km、みかんで13kmだけでした(1973〜1977年の平均から2020〜2024年の平均まで)。

比べるために、同じ期間に「同じ気温の線」がどれだけ北へ動いたかも目安を出しました。日本の年平均気温(気象庁の15地点の平均)は、この間に1.8℃上がっています。一方、全国の気象台など143地点の平年値では、標高の違いを差し引くと、緯度が1度(約111km)北へ行くごとに年平均気温は0.92℃下がります。つまり、同じ年平均気温の場所は、50年で約220km北へ動いた計算になります。

気温の線は北へ動いた。産地はほとんど動いていない。1973〜1977年の平均から2020〜2024年の平均までに北へ動いた距離。同じ年平均気温の線は約220km(年平均気温が1.8℃上がり、緯度1度で0.92℃下がるため)、りんごの産地の重心は21km、みかんの産地の重心は13km

都道府県ごとに見ると、変わったのは「北へ」より「集まった」ことでした。

1973〜1977年2020〜2024年
全国のりんごの収穫量910千t675千t(26%減)
りんご:青森県の割合48.0%61.2%
りんご:長野県の割合20.7%17.5%
りんご:北海道の割合4.9%1.1%
全国のみかんの収穫量3,413千t688千t(80%減)
みかん:和歌山県の割合9.6%22.1%
みかん:愛媛県の割合16.2%15.5%
みかん:静岡県の割合11.8%14.9%
みかん:熊本県の割合7.5%11.4%
  • いちばん北の北海道では、りんごの収穫量はむしろ減りました(44,440tから7,538t)
  • みかんは全国の収穫量が5分の1になるほど減り、和歌山県などの主な産地に集まりました

どちらも、気温の線の動き(約220km)よりずっと小さい動きです。なぜ産地が動かないのか、なぜ収穫量が減ったのかは、このデータからはわかりません。作る人の数、品種の改良、値段や輸入、ほかの作物への切り替えなど、気温のほかにも産地を左右するものがたくさんあるためです。

重心は、毎年すべてに収穫量の記録がある都道府県(りんごは10道県、みかんは20都府県。全国の収穫量の98%以上)で計算しました。ほかの県は調べる年が限られているためです。県の中での移り変わり(山の上のほうへ移るなど)や、新しく小さく作り始めた北の産地は、この計算には表れません。

もう一つの発見:気温と一緒に動いているのは、紅葉と北海道のブリ

ここからは、異なる省庁の統計を組み合わせて、「暑くなったこと」と同じ動きをしているかを確かめます。

秋が暖かい年ほど、黄葉は遅い

紅葉が遅くなったのは、気温のせいなのでしょうか。注意したいのは、「どちらも年々増えている」ものどうしは、関係がなくても一緒に動いて見えることです。この50年で年々増えたものなら何でも、黄葉日と一緒に動いて見えてしまいます。

そこで、長い傾向の影響を外すため、前の年と比べた変化どうしを並べました。全国の平均で、秋(9〜11月)の平均気温が前の年より上がった年は、黄葉した日も前の年より遅くなっているでしょうか。

秋が暖かい年ほど、イチョウの黄葉は遅い。全国の平均で、前の年と比べた秋(9〜11月)の平均気温の変化(横軸)と、黄葉した日の変化(縦軸)を1年ずつ72組の点で示した散布図。点は右上がりに並び、相関係数は0.79。最小二乗の直線の傾きは、秋が1℃暖かいと約3.3日遅い

  • 前の年からの変化どうしの相関係数は、いちょうで0.79、かえでで0.80でした。秋が前の年より暖かい年は、黄葉・紅葉も前の年より遅れる、という関係がはっきり見えます
  • 傾きは、秋が1℃暖かいと、いちょうで約3.3日、かえでで約3.6日遅くなる、という大きさでした
  • 年ごとの値どうし(変化ではなく)の相関係数は、いちょうで0.89、かえでで0.88でした

では、50年の遅れのうち、どれだけが気温によるものなのでしょうか。これは、このデータからは決められません。大まかな目安として、年ごとの関係(1℃で約3.3日)がそのまま何十年にも当てはまると仮定してみます。全国の平均の秋の気温は10年あたり0.36℃上がっているので、遅れは10年あたり約1.2日になる計算です。実際の遅れ(10年あたり2.2日)は、この目安より大きくなっています。ただし、1年ごとの変化で見た関係が、何十年もの長い変化にもそのまま当てはまるとは限りません。この差を「気温のほかの理由による遅れ」と読むことはできません。

また、地点どうしで比べると、50年で気温がたくさん上がった地点ほど遅れが大きい、という関係は見えませんでした。いちょうの29地点では相関係数が0.03で、ほぼ関係がありません(秋の気温の上昇の真ん中は2.2℃)。かえでの22地点ではむしろ逆向き(相関係数−0.56。気温がたくさん上がった地点ほど遅れが小さい)でした。地点の差には、標本木の違いも入ります。

長い期間の遅れには、気温のほかにも、標本木が年をとったり植え替えられたりしたこと、気象台の移転、9〜11月の平均気温では表せない冷え込み方の変化などがかかわっているかもしれませんが、確かめてはいません。東京の秋の平均気温は、この50年で17.6℃から18.8℃へ1.2℃上がっています(2014年12月に観測場所が大手町から北の丸公園へ移っていて、気象庁はその前後のデータは均質でないとしています)。

北海道のブリは約10倍に。海も暖かくなった

魚ではどうでしょうか。北海道の港に水揚げされた量を、2000〜2004年の平均と2020〜2024年の平均で比べました。

北海道の漁獲量2000〜2004年2020〜2024年
ぶり類1,395t13,745t(9.9倍)
さけ類173千t60千t(65%減)
  • ぶり類は約10倍になり、2020・2021・2023・2024年は、都道府県の中で北海道が1位でした。2024年は全国のぶり類の19.9%が北海道で水揚げされています
  • 一方、全国のさんまは232千tから27千tへ、するめいかは279千tから31千tへ、どちらも89%減りました。北海道のさけ類も65%減っています

北海道で水揚げされた魚:ブリは増え、サンマ・イカ・サケは減った。北海道のぶり類・さんま・するめいか・さけ類の漁獲量を1980〜2024年の年ごとに示した4段の棒グラフ。ぶり類は2010年代から増え、2024年は16.2千tで30年平均4.1千tの約4倍。さんまは2024年13.7千t(30年平均104.9千t)、するめいかは3.1千t(30年平均68.5千t)、さけ類は46.4千t(30年平均135.7千t)

この間、北海道のまわりの海(気象庁の海域区分の「釧路沖」と「日本海北東部」の平均)の年平均の海面水温は、平年との差が**−0.3℃から+1.4℃へ、1.7℃**上がっていました。気象庁も「北海道周辺海域を中心に2000年ごろから夏季の海面水温の上昇が認められます」と書いています。

1960〜2024年の年ごとの値で、北海道の漁獲量(増え方・減り方を比べやすいよう、桁数(対数)で比べました)と海面水温の相関係数を出すと、次のようになりました。

北海道の漁獲量と海面水温相関係数
ぶり類0.72(海が暖かい年ほど多い)
さんま−0.44
するめいか−0.48
さけ類0.06(ほぼ関係なし)

ブリは、長い目で見ると海の温度と一緒に増えています。ただし、前の年からの変化どうしで比べると、相関係数は0.23まで下がりました。紅葉のように「海が暖かい年はブリが多い」という関係が毎年はっきり見えるわけではありません。

漁獲量は、魚の数だけでなく、漁船の数、漁獲の規制、ほかの国の漁、どの港に水揚げするか、値段などでも変わります。サンマやイカが減った理由も、このデータからはわかりません。海が暖かくなったこととブリが増えたことは一緒に起きていますが、それだけで「暖かくなったから増えた」とは言えません。

まとめ

  • 「紅葉が遅くなった」は本当。東京のイチョウの黄葉は、1966〜1975年の平均(11月14日)から2016〜2025年の平均(11月25日)へ、約10日遅くなった。比べた地点の真ん中でも、いちょうもかえでも15.2日遅い
  • 秋が前の年より暖かい年ほど、黄葉も前の年より遅い(相関係数0.79、1℃で約3.3日)。ただし、50年の遅れのうちどれだけが気温によるのかは、このデータからは決められない
  • 「果物の産地が北へ移った」は、都道府県の単位ではほとんど当たらない。りんご・みかんの産地の重心が北へ動いたのは13〜21kmで、同じ気温の線の動き(約220km)よりずっと小さい。変わったのは、青森県や和歌山県への集まり方と、収穫量そのものの減り方
  • 「ブリが北海道で獲れる」は本当。北海道のぶり類の水揚げは20年前の約10倍で、2020年からの5年のうち4年は都道府県の1位。北海道のまわりの海も1.7℃暖かくなったが、年ごとの変化どうしの関係は弱い
  • 限界:相関は原因の証明ではない。紅葉は標本木を目で見た記録で、標本木や観測場所が変わることがある。産地の重心は県庁所在地の緯度で計算していて、県の中での動きはわからない。漁獲量は水揚げした港で数えていて、獲った海はわからない。産地や漁獲量が変わった理由は、このデータからはわからない

次回(2026年11月1日公開予定)は、クマの出没が本当に過去最多なのかを確かめます。

おまけ

黄砂は減った?

気象庁が全国11地点(札幌・仙台・東京・新潟・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・鹿児島・那覇)で目で見て記録していた黄砂は、どこかの地点で観測した日数が、2000〜2009年は平均22.7日、2014〜2023年は平均8.9日でした。多かった年は2001年(38日)、2002年(36日)、2010年(33日)です。

ただし、1967〜1999年の平均は11.8日で、2000年代が多かったとも言えます。気象庁も、1967〜2023年の期間では年ごとの変動が大きく、有意な変化傾向は見られないとしています。また、東京・大阪以外の目視の観測は2024年3月末で終わり、日数の統計も止まっているため、これより先は同じ物差しでは比べられません。

雷は増えた?

観測のやり方が変わった印のない東京と大阪の「雷日数」(雷を観測した日の数)を、30年ずつで比べると、東京は1966〜1995年の平均10.9日から1996〜2025年の平均14.7日、大阪は13.9日から18.0日に増えていました。ほかの9地点は、2024年の値の前に赤い線が引かれています。8地点は赤い実線で、気象庁はその前後のデータを比べられないとしています。那覇は赤い点線で、その前後のデータが均質でないことを示しています。2地点だけの比較なので、全国で雷が増えたかどうかまでは言えません。

出典

いずれも2026年10月30日に取得。10年・5年の平均、地点の真ん中、傾向(最小二乗の直線)、相関係数、産地の重心と気温の線の動きは、取得したデータから計算しました。紅葉の日は、うるう年でも同じ日付が同じ数になるように数えています。

この連載の記事は、「本当なの?」の一覧でまとめて読めます。

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